大工インタビュー
大工インタビュー
分業化が進む建築業界に於いて「内製化」を推し進めてきた平成建設にとって、自社大工職人は会社の顔とも言える存在。
伝統技術の継承をするための人材の育成と、実際の現場の様子、また、仕事に対する姿勢などを、一年目の新人、大工集団の中核を担う中堅大工、監督業も行う親方にインタビューしました。
――新人の仕事についてお聞きします。一年目の石原さんはどんな作業が多いですか?
ボード貼りですね。
――具体的にどんな作業なんでしょうか。
柱と柱の間にインパクトでパネルを張り付けて、部屋と部屋の間仕切りを作る作業です。
――ボード貼り以外にはどんな仕事を?
それは色々、現場の進み具合によって違うので一概には言えないです。 ボード貼りは基本的に新人の仕事なのでやりますけど、それ以外は、その現場の親方次第ですね。 これやってみるかって感じに声かけて貰って、できそうなところを少しずつ勉強していく感じです。
新人はこの仕事、中堅はこの仕事ってはっきり区別してるんじゃなくて、まず必要な作業があって、その中でそれぞれにできる仕事を割り振るって感じですね。
――小山さんのように、何年か経験を積まれた大工さんはどんな仕事をしていますか?
一言で言うのは難しいですね。大工って、これができたから次はこれっていう、マニュアルみたいなものはないんですよ。 何年やったら次の段階っていう区切りもないし、そもそも現場ごとに作業は違うし。 見える場所で最初に任せて貰えるのは、巾木(ハバキ……床面と壁面の境目に張る化粧材)かなって感じですけど…… 自分が現場に入るタイミングによって仕事内容は違いますよね。何軒も家を建てているうちに少しずつ出来ることが増えていって、いつの間にか一人前になるというか。
この前、初めて階段やった?
あ、階段は初めてでしたね。やっぱり自分が現場に入るタイミングが大きいです。
――北村さんは親方として現場を纏めていますが、現場には大体何人ぐらいの大工職人がいるものですか? また、一度に管理される物件はどれぐらいでしょうか。
現場の大工は3人くらい。監督するだけじゃなく自分自身も大工として現場で働くから、一度に管理できるのは1件。朝から晩まで一物件にぴったり張り付いて仕事。
――新人の育成について何か気をつけていることはありますか?
気を付けるというか、安全管理は最初にしっかり身につけさせる。仕事に関していえば、基本的には教えるというより、まずはやらせて、聞かれたら教えるという事が多いかな。
新人が行き詰ってるなと思っても、すぐには教えないですね。聞かれたら答えるけど、まずは自分でやり方を考えさせます。
――新人の育成については、伝統的な大工のやり方に近いでしょうか。
近いと思う。逆にハウスメーカーの大工とは、もう全然違うから。
向こうの現場は凄いですよ。自分たちの現場の近くでやってると、建て方見てびっくりする。 ある日、地震体験車みたいな、荷台に四角いコンテナが乗っかってるトラックが何台もやってきて、なんだ? と思って見てるとドン! ドン! ドン! ってそこに置いて(笑)、 ボードとか全部貼った状態の「部屋」が積み上がって……「えっ?」って思う。
――そういう建築方法だと、途中での変更は難しいですね。
ハウスメーカーは最初に全部決めた通り作るだけだから、途中での変更は難しい。 うちの現場みたいに、お施主さんがプラっと来て「ココちょっと変えてよ」なんてのはできないよ。
――そういう変更は結構あるんですか?
わりと。だから現場の人間は技術が必要になる。 収納を広くしてほしい、水廻りの位置を変えてほしい、ここに飾棚を付けてほしい……いろいろな要望に臨機応変に応える技術がね。
――小山さんは入社後工務部に在籍していましたが、工務部での経験が何か大工に活かされているという事はありますか。
いや……実は工務やってて「オレ、結構このまま大工の仕事も出来るんじゃない?」みたいな事を異動前は思ってたんですけど(笑) 、実際異動したらもう、何て言うか全然ダメで、仕事どころか、まず親方たちの会話の内容さえ理解できないんですよ。用語が全然違うんで。 ある程度工務で仕事ができるようになってたから、余計にショックでした。
――工務と大工の仕事で、共通の内容というものは全くないのでしょうか。
作業的な接点は少ないかな……ただ、工務での経験上、モノづくりは仕事の流れを掴めば面白くなるっていうことは最初から分かってたので、大工でも、まずは仕事の流れを掴もう、掴めば楽しくなるって思ってました。
――工務で一番身になった経験とは。
一番勉強になったのは、社会人としての振る舞い。上下関係について、チームワークについて、基本的な礼儀作法、そういう事を学べたと思います。 あとは仕事に対する姿勢とか、会社の姿勢とか、根本的な部分かな。新入社員っていう一番頭の柔らかい時期に、そういうものに触れたのは良かったと思いますよ。素直に身につくでしょ。
――石原さんは大学で何を専攻していましたか。
建築史です。3年の時に林業関連のセミナーに出たのが、大工になりたいと思ったきっかけだったんですけど、大学時代は特に制作などはしていませんでしたね。
――女性大工ということで、現場で声をかけられる機会もあるかと思いますが。
近所の方とか通りすがりの方が、アレッ? 女の子? って足を止めて、声をかけて下さる事が多いですね。 嬉しいですよ。声をかけて貰えるのは。
――小山さんは大学で家具を制作されていたそうですが、その経験は生かされていますか?
うーん……いや、どうだろう。学生が制作する作品と施主様の家では、全然違うから。 道具の扱い方にしても、やっぱり仕事を始めて得たものとは、いろんな意味で全然違うと思う。
――どの学部だから大工に向いているという事はありませんか。
それは、ない。理系だから、文系だから向いてるってこともない。 小山みたいに器用であるに越したことはないんだろうけど、道具は使えば慣れるし、高い所も慣れる。ものづくりはその先にあるものだから、そこは重要じゃないよ。
――大工をやっていて楽しいと思う瞬間はどんなところでしょうか。
この前、床の割り付けをやらせて貰ったんですけど、それを考えてる時は楽しかったです。
――割り付けとは?
床に木を貼っていくと、最後の部分だけが短くなったりするので、少しずつずらして貼っていくんです。 それをどう配置すれば綺麗に納まるか、現場で実測して計算するんですよ。
造作が上手くいった時は楽しいですよね。
イメージ通りできた時はね。出来あがった家を見て、お施主さんに喜んで貰えるのも。
――逆に辛いなと思うことは。
たとえば今日みたいな日(※雨)は寒いし、仕事切り上げて早く帰りたいなと思うよ(笑)!
じっくりやりたいのに時間がないとか、もどかしい事も沢山ありますよね。どの仕事でも一緒だけど。
――ちなみに、高いところは怖くないんですか?
…………。
……(笑)。
登れるようになったの?(笑)
いや、うん、ええ、端っこの方なら。柱に近いところなら何とか。
俺も最初に梁の高さに上った時は、アレっ、と思いましたね。子供の頃って割と高い場所、平気じゃないですか。 そういう感覚で、「これぐらいの高さなら余裕」って思ってたのに、実際上に立つと、アレっ、高いぞ……
怖かったんだ(笑)。
下見たら足が竦みましたね……もう慣れましたけど。だから石原の気持ちは分かる。
――大工に向いているタイプというのはありますか。
基本的に作業が続くので、淡々と作業が続けられる人が向いてるのかなあ、と思います。
立体をとらえる力は必要だと思う。平面図を見て、それを立体にするイメージ力がないと、ちゃんとしたものは作れない。
あと、数字が苦手な人は大変かもしれないですね。沢山数字出てくるし、計算しなきゃいけないし、道具の使い方もあるし。例えば指矩(さしがね)は表が普通の定規(表目)、ひっくり返すと角目(√2を掛けたもの)と丸目(円周率をかけたもの)がついてます。
――文系でも使えるんですよね……?
使えるよ(笑)。三角関数が分かれば。ただ、それぞれがぴったり合うように木材を加工して家を作っていくんだから、細かい数字や計算は本当に色々出てくる。
――学生に求めるもの、大工として働く上でのアドバイスをお願いします。
人の話を素直に聞けるってのは大事かな……頭が固いというか、変なこだわりがあると、成長し辛いんですよ。 指導した事が頭に入っていかない。逆に頭が柔らかくて、人の話を素直に聞いてくれる人は理解も上達も早い。屁理屈捏ねるよりも手を動かすっていうのは大事。
一度、貰った仕事の完成形が想像できなくて、天井を見て「最後はどうなるんだろう?」と考えていたら、怒られた事があります。お前はまだそこまで考えなくていいから、まず言われた事をやれと。
大工っていうのは職人だから、仕事の本質は手を動かすこと。とにかく手を動かさなきゃ駄目。 頭は使わなきゃいけないけど、余計なことまで考えて手が遅れるのは駄目。賢いのと頭でっかちは違うんだよ。その辺は確かに、人の話を素直に聞ける人の方がいいね。
――器用か不器用かは重要ではない。
それは重要じゃない。どちらかと言えば、重要なのは「手を動かしたものづくりが好きかどうか」だ。
――あとはやる気の問題ですか?
いや、やる気っていうのは、何年もやっていると必ず途中で燃え尽きるんだよ。 いやな事があればモチベーションも下がるし、やる気だけあっても空回りする。 だから、長く仕事を続けられるかどうかは結局好き嫌いの問題なんだと思う。楽しいかどうか。手を動かして、ものづくりする事がどれだけ好きか。 大工は手を動かすのが仕事で、職人。そこを勘違いして夢だけ大きく膨らませても、上手くいかないね。

平成13年入社。大工として腕を振るいながら、現場管理も務める、平成建設生え抜きの親方。

平成18年入社。武蔵野美術大学造形学部出身。手先が器用な、平成バンドの名ドラマー。

平成21年入社。東北大学出身。特技はフィギュアスケート(2回転ジャンプ)。