設計インタビュー
設計インタビュー
「設計士」という肩書きは良く聞きますが、実際にどんな風に仕事をするのか、具体的な姿があまり知られていない職業でもあります。
平成建設の設計士としてするべきこと、そして設計という仕事の楽しさ、喜びなど、 様々な現場を経験したベテラン設計士と、全てが新鮮に映る新人設計士に設計士の仕事の醍醐味についてインタビューしました。
――設計の仕事は、契約のどの段階から始まるんですか? また、打ち合わせではどんな事を話すのでしょうか。
それは色々、ケースバイケースです。他社と競合している段階で図面を描く事もあるし、最初から「平成建設で」と決めてらっしゃるお客さんもいるし。
お客さんと話をする時、プランも大事だけど、一番大切なのは設計士が信頼される事なんだよね。極端な話、プランを提出しなくても「あなたに任せる」と言って貰うぐらいじゃないと駄目だと、個人的には思ってます。
――設計士にも話術は必要ですか。
いいものを作ろうって気持ちがあれば、話術なんか関係なく伝わるんですよ。プランだってそう。 うちの設計は単純に間取りを書いただけのものじゃないから、見せれば伝わる。
――ただの間取り以外の部分とは、具体的にどんなものですか?
間取りを描くだけなら素人でもできる。でしょ? でもプロは、空間の構成を設計する。紙面上の製図だけじゃなく、生活する空間も設計する。 そこに住む人のこと、利用する人のこと、敷地を見て、建物を考えて、庭、その中間域。全部をトータルで提案する。
分業前提のメーカーとはそこが違いますね。インテリアや外構、それぞれ担当が変わるより、お客さんと話をして、一番希望を把握している担当設計士が全部纏めてやった方がお客さんの希望を活かせる。 当然、設計以外の知識もたくさん必要になるんですけど……
――設計士も、多能技能が必要ということでしょうか。
そうだね。多能技能的です。インテリアだけじゃない、税金のこと、融資のこと、法律のこと、そういう事も凄く重要。 家を建てるための条件を全部把握して、トータルに提案する。それがお客さんのための住まいづくりだし、平成建設の設計士の仕事。 うちの設計部門の人数見れば、「お客さんのための住まいづくり」の体制については誰でも納得して貰えると思いますよ。今現在、社内に設計士が何人いると思いますか?
――本社にいるのは30人前後ですね。
支店を合わせると50人弱います。これは会社の規模を考えると、とても多いと言える。お客さんの幸せのために建物を作る、そのためには良い設計、良い設計者が必要であるという、うちの会社の信念が現れた数字です。
――新入社員の教育方法について教えてください。
基本的に指導する人間一人に、新入社員が一人か二人ついてやっていきます。 まあ、教える事って言っても、ソフトの操作方法ぐらいのものなんだけどね。
新人の主な仕事は実施設計ですね。他にも色々な仕事がありますけど、メインは実施設計。
僕が修業時代に就職した会社では、最初の3年間は実施設計しかやらせて貰えなかった。
えっ!? そうなんですか?
そう。それを考えると、善田はもっといろんな事をやってるよね。実施設計をやりながら、お客さんとの打ち合わせにも出るし、プランも考える。工事監理にも行くし、現場とのやり取りも多い。 僕の目から見ると、新人にとって恵まれた環境だと思う。
――平成建設の特徴的な点ですね。
更に、工務や大工の「良いものを作ろう」っていう、高い意識に触れながら仕事ができるってことも恵まれてる。環境が設計士としての自覚を育ててくれるんだね。
確かにそう思います。周りがみんな「いいものを作ろう」って意識でいるから、自分自身も「いいものを作らなくちゃ」と思うし、 その為に何をすべきか、どうすればいいのかを考えるようになりますね。
目標に至る方法論は教えてあげられるけど、目標自体までこっちがこうして、ああしてと言わないと浮かばないようじゃ困る(笑)。 逆に、その人の感性、何を見て美しいと思うか、何を作りたいと思うか、そういった点は一切「指導」しません。個人のカラーは育てていかなければいけない点だからね。
――善田さんは工務部の経験もありますね。
1年間やりました。楽しかったですよ! 設計部に異動になる時も、もうちょっと工務やっててもいいかな、と思ったぐらい。 僕はものづくりをしたいっていうのが設計を目指した動機だったので、建物が出来上がっていく現場はとても面白かったです。
――工務部の経験は設計の仕事にも活かされていますか?
鉄筋しろ木材にしろ、実物のスケール感と素材感を理解するのに、現場は最適なんですよ。 あと工程についても、無理を言える場所、言えない場所っていうのが分かるし、職人さんたちと遠慮なく意見を交わして、意思疎通がしっかりできるようになりました。 まさに「身になる」勉強でしたね。
――設計士といえば一級建築士や二級建築士という資格がつきものですが、これを取るメリットはどのようなものなんでしょうか。
それは設計士としての必須条件。メリットは名刺に書けるってだけ。持ってるから偉いとか、良い設計士とか、全くそういう意味じゃないもの。 ただ、あれは「お勉強」の部分があるから、早いうちに取る方がいいんだよね。学科試験は年を取ると不利になる。
――例えば、学生のうちから資格の勉強に取り組むのは有意でしょうか。
無駄ではないと思う。まあ、でもねえ…やっぱり学生時代は、そんな勉強よりも学生にしかできない事をするべきですよ。
――学生にしかできない事とは、具体的にどんな事でしょう。
散々言い尽くされてるけど、とにかく見ろと。経験しろと。人間という器を広げなさいと。 一番大切なのは、いろんなものを見て、それは建築であったり絵画、自然風景、何でもいいんだけど、時間が許す限り動き回って、見るという経験を積むことなんだよね。 それもただ「見る」んじゃ駄目で、見て、感じなさいと。心を動かしなさい。感動しなさい。豊かな人間になりなさい。 眺めて終わるのは見るとは言わない。対象に興味を持ち、それを堀り下げて、心が震えるような体験を重ねることが、設計という仕事に関しては一番大切だから。 学科の勉強や、図面の書き方なんかよりもずっとずっと大切。
時間があるのは学生時代だけっていうのは、本当、学生の時には実感できないんですよね。僕も散々言われたけど、実感できたのは就職してからだったから……
――善田さんは学生のころ、何か設計士の仕事のために特別な勉強はしましたか。
勉強というか、ゼミで古い民家の調査をやっていました。 古い和風建築って、図面が残ってないんですよ。だからそういうお宅を訪問して、お話を伺って、実測させて貰って……それは沢山やりましたね。
ああ、だから善田はお客さんと話をするのが上手いのか。話を聞くのに慣れてる?
どうでしょう(笑)。後は、色んな木材に触れたり、古い木の組み方なんかを実際に見る事ができたのは良い経験になっていると思います。 実測を繰り返して、日本家屋のスケール感が多少なりとも掴めたのも。
――実際に設計士になってみて「学生のころは考えもしなかった」という点は?
設計士の仕事なんて全く想像がつかなかったんですけど(笑)、一番はやっぱりお客さんがいるということ。 お客さんとお話しして、希望をたくさん聞いて、その時初めて、お客さんのために家を建てる、プランを考えるってことが、こんなにも楽しいんだと知りました。 ものづくりをしたいって気持ちは昔から変わっていないんですが、今はそれに加えて、お客さんに喜んで貰いたいっていう気持ちが大きくなったと思います。
――設計士という仕事に就くために、必要な心構えなどはありますか。
いや、自然体で良いと思うんです。構える必要はない。入社すれば、設計士として成長できる環境がしっかりと整っていますから。
まず、がむしゃらにやってみる。そうすれば仕事が分かってくる。不安やプレッシャーはいつになってもあるものだけど、乗り越えていけますよ。
――設計士にとって一番楽しい瞬間というのは、何をしている時なんでしょう。
僕は、お客さんと話をして、その方の希望を聞いて、どんな家を建てるのか考えている時が一番楽しいです! 図面を起こして、それをお客さんに見せる瞬間も楽しいですよ。
僕は閃いた瞬間かな。お客さんの希望と、敷地や立地の条件を全部頭の中に入れてかき回してみる。ぐるぐるかき混ぜていると、ぱっと閃く瞬間があって、その瞬間が楽しい。
――多くの設計をする事で、アイディアが枯渇するということはありませんか。
それはない。だって一件一件全部条件が違うから、毎回異なった案が出てくるよ。 まあ、中々思いつかない事もあるけど、その時は気分転換する。僕は海に潜るのが趣味なんだけど、行き詰った時に一人で潜ると、スーッと頭がクリアになって、海底に図面が浮かんでくるんだよね。 自然っていう美しいものに触れて、感動するからだろうなあ。
気持の切り替えは大切ですよね。一日かかる仕事が半日で終わる事もあるし、逆に長引くこともある。その辺、うまく切り替えるのが、最初のうちは特に難しいです。 アイディアが浮かばないと作業効率も落ちて……いや、これは「楽しくない時」ですね(笑)。
――設計士に向いているタイプを上げるとすると、どんな人でしょうか。
単純に線を描くのが楽しいっていうのは、結構重要だね。
――線を描くのが「楽しい」?
そう。僕は昔から定規で直線を引くのとか、コンパスで丸描くのが意味もなく好きだったんだけど、設計士はそういう人、多いんじゃないかな。 そうでなければ、朝から晩までずーっと図面描いてられないでしょう! 図面を描くのが「楽しい」んだよね。
ああ、わかります。僕も線を描くのが好きです。一本一本細い線を引いて、数値を入れて、それが最後にぴったり合うのが楽しい!
合わないと気持ち悪くてやり直すよね。
やり直しますね。ぴったり合わないと嫌で仕方がない。
というわけで、線をキッチリ引くのが好きな人は設計に向いてるかもしれない(笑)。あと、物の大きさが気になる人。何か見つけるとすぐスケール(巻尺)で測る人。設計士はポケットにいつも自前のスケールをひそませている。
――設計部の飲み会に参加した際、突然みんなで居酒屋のテーブルを測り始めた時は、さすがに驚きました(笑)。
設計士には良くあること(笑)。気になるとつい実測しちゃうのもそうだけど、つまりは好奇心が旺盛で、学ぶ事を嫌がらないタイプが向いてるんだろうね。
――最後になりましたが、学生にアドバイスをお願いします。
繰り返しになりますが、構える必要はないと思います。 成長できる環境は提供できるので、あとは自分がどうやって考え、学んでいくか。ものづくりをしたい、誰かに喜んで貰いたいという気持ちがあるならきっと大丈夫です。
設計って、知れば知るほど分からなくなってくる。知識が増えれば増えるほど迷う事が多くなるんです。 おかげでいつまで経っても飽きない。そこが一番楽しい仕事。だから、技術屋になるのではなく良いものを作りたい、現状に満足せずに成長していきたい、そういう気持ちがある人を望みます。

平成16年入社。マンション・住宅・店舗など、多様な建築の設計に関わる。一級建築士。趣味はスキューバダイビング。

平成20年入社。工務部に1年間所属後、設計部に異動。只今三島住宅展示場にて修行中。趣味は温泉旅行。