施工は「監督」と「多能工」の二つに道が分かれるが、そのどちらも現場で 多数の人間をまとめる 素質が必要となる。 現場では煽てたり怒ったり宥めたり賺したりする小手先の対応ではなく、的確な判断力にこそ人は従う。多くの価値観が入り乱れる現場だからこそ、公平な視点と毅然とした態度が必要だ。
設計士はだいたい、手のかかるものを造りたがる。 しかし現場には納期があり、職人は人的コストの中でやりくりしなくてはいけない。 設計の自己満足なら断るし、価値があると認めれば職人を上手く説得する。 この判断のさじ加減で、建物の印象が変わる。 監督の判断基準は完成イメージに大きく関わってくる。
多能工の仕事は常にチームプレイ。声を掛けあいながら型枠を建込み、足場を組み、鉄筋を配し、コンクリートを打つ。 その完成度はチームとしての結束力に左右され、個人でコツコツ技術を磨く大工とはまた違った面白さがある。 同期同士、先輩後輩の結びつきも強く、チームとしての絆を感じられる部署だ。完成した時の喜びは二倍三倍に膨れ上がる。
竣工後の設計士からのコメントには監督・多能工への謝辞が並ぶ。
「工期ギリギリだったのに無茶を言い、何とか調整してくれた監督、一回で施工を成功させてくれた多能工の皆…」
社交辞令ではなく、本当に無茶を言う のである。
これは事前に覚悟して頂きたい。それでも「いいものを造りたい」気持ちは同じだから、監督は何とか工程をやりくりし、職人はそれに高い施工精度で応えるのだ。
施工には「多能工」と「監督」という二つの道が用意されています。
多能工としてのキャリアは、施工精度の向上、大人数を率いての施工を究めることで積み重ねていきます。
特殊建機の操縦や足場の組み立てなど業務上様々な資格が必要となるため、キャリアのどの段階においても資格の取得が奨励されます。課長は適切なメンバーを選んで班を組成し、班長は数名の部下を率いて現場に臨みます。
監督としてのキャリアは住宅・マンションで細かい部分が異なりますが、最終的には大規模な現場を監督するリーダー職と部内全体を監督するマネジメント職に分かれます。
マンション監督としての醍醐味は、多額の予算、沢山の人員を動かして大きなものを造る達成感。住宅監督としての醍醐味は、お施主様と二人三脚でものづくりに取り組む感動。
どちらもやりがいのある仕事です。
職人も監督も同じ施工部門に携わっているため、キャリアの中途でお互いの部門を行き来すること、適性によって異動することもあります。
建築予定地を平らに均していく作業。 資格を持つ者が特殊な重機を使って整地し、その他大勢は根伐り、埋め戻し、地均しなどをスコップで行う。 重機の操縦は土工事の花形。積極的に資格を取得して主役に躍り出よう。
型枠とはコンクリートを流し込む枠のこと。 型枠の建込みは業務の中で大きなウェイトを占めており、非常に重要な作業。 型枠の内側がそのままコンクリートの表面となるため、僅かな歪みやズレも許されない、ミリ単位の精密さが要求される。 厳つい男たちが取り組む作業は、意外と繊細なのである。
実施設計図を基に施工図が作られ、施工図から加工帳が作られる。 コンクリートを打設してしまえば見えなくなってしまう箇所なので、図面通りの正確な施工が求められる。 配筋が済むと、現場監理を担当する設計士のチェックを受ける。
型枠にコンクリートを流し込み、表面を鏝(こて)で綺麗に均す作業。 時間がかかりすぎると強度に問題が出るため、素早く、正確に行う。 打設予定日は雨が降って欲しくない日ナンバーワン。工程を管理する監督にとっても切実な問題。
足場の設置届や道路使用許可届といった書類の作成、足場チェック、職人たちの体調チェックなど、現場の安全を守るために細心の注意を払う。 多くの職人が関わるマンションの現場では、毎朝の朝礼で危険予知活動を行っている。 よく監督はホウキとチリトリを持って清掃をしているが、現場の整理整頓・清掃は事故防止に非常に重要。 安全管理は4つの管理業務の中で最も重要なものだ。
コンクリートの品質を調べる試験を行ったり、実施設計図から施工図や躯体図を起こして整合性をチェックするなど、建物の品質を高く保つための業務。 ここで監督が、細かい違和感に気付けるか否かで建物の完成度が驚くほど変わる。
現場というものは基本的に予定通りに進まないものだ。設計変更は良くあることだし、天候の影響もある。 平成建設では複数の現場が同時進行しているため、職人の配置を流動的に行え、工程の調整が比較的しやすい。 逆に遅れている現場に人手を持っていかれる事もあるが、そこは持ちつ持たれつ。困ったときはお互い様。
コストと工期はオーバーしないことが大前提。その上でいかに経費を低く抑え、利益を確保できるかが監督の腕の見せ所。 効果的な人員配置は人工代(にんくだい)の節約に繋がるが、大概「面白いものを造りたい」設計士との激しい攻防戦が繰り広げられる。